高岡市で記録的な豪雨による浸水被害が相次ぎました。
特に深刻な状況となったのが、能登半島地震で液状化被害を受けた伏木地区です。
道路が冠水し、住宅や店舗では浸水が発生。
伏木錦町の店舗では店内の水位が約50センチに達し、冷蔵庫や商品などが水につかる大きな被害となりました。
一方、高岡市福岡町では小矢部川支流の黒石川が氾濫し、福岡金属工業団地周辺に川の水が流入。
建物の浸水や道路の通行止めも発生しました。
能登半島地震からの復旧・復興を進めている最中に襲った今回の豪雨。
なぜ高岡市ではこれほど深刻な被害となったのでしょうか。
当記事では、伏木地区や福岡町の被害状況を振り返るとともに、能登半島地震による液状化との関係や、今後の液状化・水害対策について考えます。
高岡市伏木地区で道路冠水・家屋浸水
高岡市伏木地区では、豪雨によって道路の冠水や住宅、店舗への浸水が相次ぎました。
伏木地区は2024年1月1日に発生した能登半島地震で深刻な液状化被害を受けた地域です。
高岡市によると、能登半島地震では市内で震度5強を観測。
特に伏木、吉久、横田の3地区では液状化によって道路や上下水道などのインフラが大きな被害を受けたほか、宅地の傾斜や沈下も多数発生しました。
市が実施した地盤調査では、被害の大きかった3地区で「地下水位が高い」「地表面近くに緩い砂の層がある」という特徴が確認されています。
地下水で満たされた緩い砂の層に地震の力が加わったことが、液状化につながったと考えられています。
そんな伏木地区を、今度は豪雨が襲いました。
地震からの復旧を進めながら、再び自然災害への対応を迫られる状況となったのです。

伏木錦町では店内の水が約50センチ
伏木錦町にある「姫野商店」では床上浸水が発生しました。
報道によると、冷蔵庫や冷凍庫、棚だけでなく、販売する昆布約120キロも水につかり、被害総額は約150万円に上るとのこと。
一帯は海抜が低く、店主によると浸水が始まったのは26日午後10時ごろ。
27日未明から早朝にかけて水位は店内で約50センチに達し、太もも付近まで水につかる状況となりました。
さらに漏電によって電気が使えなくなり、スマートフォンのライトを頼りに、泥水を取り除くなどの復旧作業を行わなければならなかったといいます。
店舗では能登半島地震を経験した後、冷蔵庫や棚を水につかりにくくするため、かさ上げする対策を行っていました。
しかし、今回の豪雨による浸水はその想定を超えました。
約60年間の商売で最も大きな被害だったといい、地震被害から立ち直ろうとしていた住民にとって、精神的にも経済的にも大きな打撃となったことがうかがえます。
「もうやってられん」という言葉には、ひとつの災害が終わらないうちに次の災害が襲ってくる、被災地の厳しい現実が表れています。

理容室では排水溝から水が噴き出す
被害を受けたのは姫野商店だけではありません。
同じ伏木錦町にある理容室「ヘアーサロン・シバタ」でも浸水被害が発生しました。
報道によると、道路の冠水によって水が逆流し、洗濯機の排水溝から噴水のように水が吹き出したといいます。
浸水によって店内のいすや空気清浄機が使用できなくなりました。
これまでにも災害への備えを行っていたものの、今回の豪雨は想定を上回る規模でした。
ここで注目したいのは、個人や店舗単位の対策だけでは防ぎきれないほどの水害が発生したという点です。
高岡市も宅地開発に関する情報の中で、水害について注意を呼びかけており、特に内水被害は発生頻度が高いため対策が重要だとしています。
今回の被害は、建物単位の浸水対策に加え、地域全体として排水能力や冠水対策を考えていく必要性を改めて浮き彫りにしたといえるでしょう。

高岡市福岡町では黒石川が氾濫
豪雨による被害は伏木地区だけにとどまりませんでした。
高岡市福岡町では、小矢部川支流の黒石川が氾濫。
川からあふれた水が福岡金属工業団地一帯へ流れ込み、建物への浸水が発生したほか、黒石川を渡る橋や周辺道路が通行止めとなりました。
工業団地内の企業に勤務する男性によると、午前7時半ごろの時点では雨が強い程度だったものの、午前8時ごろになると周囲の水位が急激に上昇したといいます。
わずかな時間で状況が変化したことが分かります。
さらに注目されるのが、黒石川では前年8月にも大雨によって水が溢れていたという証言です。
今回だけではなく、豪雨のたびに氾濫や浸水のリスクが高まるのであれば、河川整備や排水対策、避難体制などを含めた継続的な対策が重要になります。
工業団地では事務所の床下浸水も発生し、水圧によってシャッターがゆがむ被害も報告されました。
住宅だけでなく企業活動にも影響が及んだことから、地域経済という観点でも豪雨災害への備えが求められます。
射水市では高齢者らが避難
高岡市に隣接する射水市でも避難が行われました。
高齢者等避難が発令され、大門総合会館には正午時点で33人が身を寄せました。
報道では、水位が上昇した和田川沿いに暮らす76歳の男性のケースが紹介されました。
家族が仕事で外出しており、1人で自宅にいたところ、様子を見に来た近所の人が避難所まで送ってくれたといいます。
このエピソードから見えてくるのが、高齢者など自力で素早く避難することが難しい人を地域でどう支えるかという課題です。
大雨や河川の氾濫では、短時間で状況が悪化する可能性があります。
行政による避難情報だけでなく、近隣住民による声かけや避難支援も、命を守るうえで重要な役割を果たします。

高岡市伏木を襲う「複合災害」
今回の高岡市伏木地区の被害を考えるうえで重要なのが「複合災害」という視点です。
伏木地区では能登半島地震によって液状化が発生し、道路や上下水道、宅地、建物などに大きな被害が生じました。
その復旧・復興が続く最中、今度は豪雨による道路冠水や建物への浸水が発生しました。
つまり、
「地震→液状化→復旧・復興→豪雨→冠水・浸水」
という形で、異なる災害の影響が重なっているのです。
地震に備えて家具や設備を固定する、液状化に備えて地盤を強化するといった個別の対策はもちろん重要です。
しかし、地域の防災を考えるのであれば、地震だけ、水害だけと災害を分けて考えるのではなく、複数の自然災害が連続して発生する可能性まで想定する必要があります。
実際、高岡市は2026年7月に公表した宅地開発に関する留意事項でも、近年の自然災害を踏まえ、「液状化」と「水害」の双方に留意するよう求めています。
伏木地区の今回の被害は、まさにその必要性を示す出来事になったといえるでしょう。
高岡市伏木の液状化対策は今後どうなる?
では、能登半島地震で大きな被害を受けた伏木地区の液状化対策は今後どうなるのでしょうか。
高岡市は伏木・吉久・横田地区で地盤調査を実施し、有効な液状化対策として「地下水位低下工法」を選定しています。
地下水位低下工法は、地下水の水位を下げることによって地盤を液状化しにくくする方法です。
高岡市は、道路と宅地を一体的に対策する中長期的な取り組みとして検討を進めています。
ただし、「この工法を導入すれば今後の被害をすべて防げる」というわけではありません。
高岡市は2025年6月時点で、地下水位低下工法の効果について震度5強程度までとされており、大規模地震による液状化被害から確実に地域を守る手法とは言い切れない側面があるとの認識も示していました。
また、地下水位を下げることで地盤沈下が発生しないかといった検証も重要です。
市の検討では、伏木地区で想定される地盤沈下は約1センチで、有害な地盤沈下が生じる可能性は小さいと評価されています。
今後必要なのは、こうした液状化対策だけではないでしょう。
今回の豪雨被害を踏まえれば、道路冠水、内水氾濫、河川氾濫などへの対策を組み合わせ、地震と水害の双方に強い地域づくりを進めることが課題になります。
高岡市は伏木地区について、2025年度から2026年度を対象とする「災害に強く安全・安心に暮らせるまちづくり」の計画も進めています。
復旧前の状態へ単純に戻すだけでなく、次の災害による被害を少しでも減らす「防災・減災型の復興」が重要になりそうです。
よくある質問
Q1.高岡市伏木地区ではなぜ液状化被害が大きかったのですか?
高岡市の地盤調査では、伏木を含む被害の大きかった地区で地下水位が高く、地表面近くに緩い砂の層が確認されています。
地下水で満たされた緩い砂の層に能登半島地震の揺れが加わったことで、液状化が発生したと考えられています。
Q2.1度液状化した場所は、再び液状化する可能性がありますか?
可能性があります。
高岡市によると、能登半島地震で液状化による宅地被害が多かった地点では、同規模の地震が発生した場合、地下水位が高く地表面近くにある緩い砂の層で再び液状化する可能性があるとされています。
Q3.高岡市は伏木地区でどのような液状化対策を進めていますか?
高岡市は伏木、吉久、横田の3地区について、有効な対策工法として「地下水位低下工法」を選定しています。
道路と宅地を一体的に液状化しにくくするための対策として検討が進められています。
Q4.今回の豪雨被害と液状化は同じ原因ですか?
同じものではありません。
液状化は、地下水を多く含む地盤が地震の揺れによって一時的に液体のような状態になる現象です。
一方、道路冠水や床上浸水、河川氾濫は大雨による水害です。
ただし、地震・液状化から復旧途中の地域が豪雨被害を受けたという意味で、被災者にとって災害の影響が重なっています。
Q5.高岡市では今後、液状化だけでなく水害対策も必要ですか?
重要になると考えられます。
高岡市も宅地開発について、液状化だけでなく水害にも留意するよう呼びかけています。
今回、伏木地区では道路冠水や店舗への浸水、福岡町では黒石川の氾濫が発生しました。
将来的な地域防災では、地震・液状化・内水氾濫・河川氾濫などを総合的に考えていく必要があるでしょう。

まとめ
高岡市を襲った今回の豪雨では、伏木地区で道路冠水や店舗・住宅への浸水が相次ぎ、福岡町では黒石川が氾濫しました。
特に伏木地区は、能登半島地震による深刻な液状化被害から復旧・復興を進めている途中です。
地震を経験して対策を行った店舗でも、その想定を超える浸水被害が発生しました。
「もうやってられん」という住民の言葉からは、度重なる災害に直面する被災地の疲弊が伝わってきます。
高岡市では液状化対策として地下水位低下工法などの検討が進められていますが、今回の豪雨は「地震だけに強い町」をつくるだけでは十分ではないことも示しました。
地震、液状化、豪雨、内水氾濫、河川氾濫――。
災害を個別に考えるのではなく、複数のリスクが重なることを前提とした防災・減災対策が求められます。
被災した店舗や住宅の1日も早い復旧とともに、伏木をはじめとする地域が、これまで以上に災害に強い町へ再生していけるかが今後の大きな課題となりそうです。
※記事内の画像にはイメージが含まれています。


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