富山県氷見市で自動車整備・販売を手掛けてきた有限会社穴倉自動車工業が、富山地裁高岡支部から破産手続き開始決定を受けました。
負債総額は、金融債務約1,000万円を含む約4,700万円です。
穴倉自動車工業は1975年創業。
氷見市を主な営業エリアとして、新車・中古車の販売から車検、定期点検、修理まで手掛け、約半世紀にわたって営業してきた地域密着型の自動車会社でした。
しかし、2020年以降は新型コロナ禍に加え、地域の人口減少や高齢化によって需要が低迷。
さらに、自動車部品や車両の仕入価格上昇を販売価格や整備料金に十分転嫁できず、厳しい経営が続いていました。
2019年以前には3,000万円を超えていた年商が、2025年9月期には約1,000万円まで減少しています。
なぜ、長年にわたって地域のカーライフを支えてきた老舗自動車整備会社が破産に至ったのでしょうか。
当記事では、穴倉自動車工業の倒産までの経緯とともに、地方の自動車整備工場が直面している課題について深掘りします。
穴倉自動車工業が破産
有限会社穴倉自動車工業は、富山県氷見市島尾に本社を置き、自動車の販売・整備を行ってきた会社です。
1975年3月に創業し、1989年4月に法人化。
氷見市を中心に、個人客向けの新車・中古車販売、車検、定期点検、修理など幅広いサービスを展開してきました。
2026年9月3日に事業を停止して自己破産を申請し、9月10日に富山地裁高岡支部から破産手続き開始決定を受けたと報じられています。
負債総額は約4,700万円です。
約50年の業歴を持つ会社でしたが、近年は厳しい経営状況が続いていました。
大きな変化が表れたのが2020年以降です。
2019年以前には年間3,000万円以上の売上を計上していましたが、新型コロナウイルスの感染拡大以降、地域の人口減少や高齢化なども背景に需要が低迷しました。
その結果、2025年9月期の年間収入高は約1,000万円まで落ち込んでいます。
単純比較では、以前の3分の1程度の水準です。
地域密着型の自動車整備会社にとって、商圏内の需要減少が経営に与えた影響は小さくなかったと考えられます。

穴倉自動車工業はなぜ倒産したのか?
穴倉自動車工業の倒産は、ひとつの原因だけで説明できるものではありません。
公表・報道されている情報からは、「需要の低迷」「人口減少・高齢化」「仕入価格の上昇」「価格転嫁の難しさ」など、複数の経営課題が重なったことが分かります。
コロナ禍以降に需要が低迷
経営環境が厳しくなる大きなきっかけとなったのが、2020年以降の新型コロナ禍です。
それ以前は年商3,000万円以上を計上していましたが、その後は自動車関連需要が低迷。
売上規模は縮小していきました。
人口減少と高齢化による地域需要の縮小
地方の地域密着型企業にとって、商圏人口の変化は重要な問題です。
穴倉自動車工業も氷見市を主な営業エリアとしていたため、人口減少や高齢化による需要低迷の影響を受けました。
全国展開する企業とは異なり、限られた地域を商圏とする事業者の場合、地域内の顧客が減少すると、新規顧客を増やすだけで売上減少を補うことが難しいケースがあります。
部品や車両の仕入価格が上昇
売上減少に追い打ちをかけたのが、仕入価格の上昇です。
自動車部品や車両の仕入価格が上がる一方、そのコスト増加分を車両販売価格や整備料金へ十分に転嫁できず、営業段階から赤字が続いていたとされています。
値上げをすれば顧客離れにつながる可能性があります。
しかし、価格を据え置けば利益率が悪化します。
特に地域密着型の小規模事業者にとって、この「価格転嫁」の難しさは経営を左右する問題です。
売上は約3分の1の水準に
こうした要因が重なり、2019年以前に3,000万円を超えていた年間売上は、2025年9月期には約1,000万円まで減少しました。
売上が大幅に縮小するなかで仕入コストが上昇すれば、固定費などを吸収することも難しくなります。
金融機関や代表個人からの借入金によって赤字を補填していましたが、最終的には収益改善の見通しが立たず、事業継続を断念することになりました。

事業承継後も経営改善には至らず
穴倉自動車工業では、厳しい経営環境のなかで事業承継も行われていました。
2022年12月に前代表が亡くなり、その後に子息が事業を承継しました。
一般的に地方の中小企業では後継者不足が課題になることがありますが、穴倉自動車工業の場合は後継者が存在し、実際に事業が引き継がれています。
それでも経営環境そのものを好転させることは容易ではありませんでした。
地域需要が回復しない一方、部品や車両などの仕入価格は上昇。
価格転嫁も十分に進まず、赤字が続きました。
事業を引き継ぐ人がいたとしても、顧客数や売上、利益を確保できなければ会社を維持するのは難しくなります。
穴倉自動車工業のケースは、「後継者がいること」と「事業を持続できること」は必ずしも同じではないことを示す一例とも言えるでしょう。
自動車整備業界で進む廃業・倒産
穴倉自動車工業の破産を考えるうえでは、自動車整備業界全体の動向にも目を向ける必要があります。
帝国データバンクによると、2026年上半期に発生した自動車整備事業者の休廃業・解散は259件でした。
前年同期の186件から約4割増加し、過去最多を更新しています。
さらに、倒産した36件を合わせると、2026年上半期だけで295件の自動車整備事業者が市場から撤退しました。
特に目立つのが小規模事業者です。
資本金が判明している撤退事業者のうち、資本金1,000万円未満の事業者や個人事業主などが大部分を占めています。
帝国データバンクは、小規模な自動車整備事業者の撤退が約8割を占めるとしています。
こうした傾向は2026年に突然始まったものでもありません。
2024年度にも自動車整備事業者の休廃業・解散は382件、倒産は63件発生し、合わせて445件が市場から退出していました。
帝国データバンクは、パーツ仕入価格や人件費の上昇、少子高齢化によるユーザー減少、整備士不足などを厳しい経営環境の背景として挙げています。
穴倉自動車工業が直面した「需要減少」「コスト上昇」といった問題は、全国の自動車整備事業者にも共通する課題となっています。
地方の「街の自動車整備工場」が直面する課題
地方の「街の自動車整備工場」は、車検や点検、故障時の修理などを担う身近な存在です。
特に自動車への依存度が高い地域では、生活を支える重要なサービスの1つでもあります。
しかし現在、その経営環境は大きく変化しています。
人口減少によって顧客数が減る
第1の問題が人口減少です。
地域密着型の自動車整備工場では、営業エリアが限定されるケースが少なくありません。
商圏人口そのものが減少すれば、自動車販売だけでなく、将来的には車検や点検、修理などを利用する顧客の確保にも影響する可能性があります。
部品価格や人件費などのコスト上昇
自動車整備には交換部品をはじめ、様々なコストが掛かります。
帝国データバンクも、自動車整備業界を取り巻く問題としてパーツ仕入価格や人件費の高騰を挙げています。
コスト上昇分を整備料金へ転嫁できれば収益を維持できますが、価格競争があるなかで値上げすることは簡単ではありません。
穴倉自動車工業も、仕入価格上昇分を販売・整備価格に十分転嫁できなかったことが経営を圧迫しました。
自動車整備士不足
人材確保も大きな課題です。
帝国データバンクは以前から、自動車整備業界で整備士不足や経営者の高齢化、後継者問題が深刻化していると指摘しています。
熟練した整備士が退職しても代わりとなる人材を採用できなければ、受注できる仕事そのものを減らさざるを得ない可能性があります。
電子化・高度化する自動車への対応
さらに見逃せないのが、自動車そのものの変化です。
現在の自動車ではコンピューター制御が広がり、整備事業者側にも新しい設備や専門知識、人材育成が求められています。
帝国データバンクも、自動車の電子化への対応にはノウハウ、新設備の導入、人材育成が必要であり、小規模事業者にとって対応が難しいケースがあると指摘しています。
つまり街の自動車整備工場では、
・「顧客が減る」
・「仕入価格が上がる」
・「人材確保が難しい」
・「設備投資が必要になる」
という複数の課題へ同時に対応しなければならない状況が生まれています。
穴倉自動車工業の破産も、こうした地方の小規模自動車整備事業者を取り巻く厳しい環境を考えるうえで注目される事例です。

よくある質問
Q1. 穴倉自動車工業はどこの会社ですか?
有限会社穴倉自動車工業は、富山県氷見市島尾に本社を置いていた自動車整備・販売会社です。
氷見市を主な営業エリアとして、新車・中古車販売、車検、定期点検、修理などを行っていました。
Q2. 穴倉自動車工業の負債はいくらですか?
負債総額は約4,700万円です。
このうち金融債務は約1,000万円とされています。
Q3. 穴倉自動車工業はいつ創業した会社ですか?
1975年3月創業です。
1989年4月に法人化されており、約半世紀にわたり事業を続けてきました。
Q4. 穴倉自動車工業はなぜ倒産したのですか?
1つの要因だけではなく、コロナ禍以降の需要低迷、地域の人口減少・高齢化、部品や車両の仕入価格上昇、価格転嫁の難しさなどが重なりました。
2019年以前に3,000万円を超えていた年商は、2025年9月期には約1,000万円まで減少。
借入金などで赤字を補填していましたが、収益改善の見通しが立たず事業継続を断念しました。
Q5. 自動車整備業界では倒産や廃業が増えているのですか?
帝国データバンクによると、2026年上半期の自動車整備事業者の休廃業・解散は259件で、倒産36件を合わせると295件が市場から撤退しました。
前年同期を上回り、半期として過去最多となっています。

まとめ
富山県氷見市で約半世紀にわたって営業してきた穴倉自動車工業が、破産手続き開始決定を受けました。
負債総額は約4,700万円です。
同社は1975年の創業以来、新車・中古車販売、車検、点検、修理などを手がけてきましたが、2020年以降は需要が低迷しました。
さらに地域の人口減少・高齢化、部品や車両の仕入価格上昇、価格転嫁の難しさなどが重なり、2019年以前に3,000万円を超えていた年商は2025年9月期には約1,000万円まで減少しました。
事業承継後も厳しい状況は変わらず、借入金などで赤字を補填しながら営業を続けたものの、最終的には収益改善の見通しが立たず、事業継続を断念しています。
一方、これは穴倉自動車工業だけに限った問題ではありません。
2026年上半期には、倒産・休廃業・解散を合わせて295件の自動車整備事業者が市場から撤退しており、小規模事業者を中心に厳しい状況が続いています。
人口減少、顧客の高齢化、部品価格や人件費の上昇、整備士不足、そして自動車の電子化・高度化。
地域住民のカーライフを長年支えてきた「街の自動車整備工場」が、こうした構造的な変化にどう対応していくのか。
穴倉自動車工業の破産は、地方の自動車整備業が直面している経営環境の厳しさを改めて浮き彫りにする事例となりました。
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