2026年7月、富山空港の愛称がこれまでの「富山きときと空港」から「富山高山すし空港」へ変更され、大きな話題となりました。
インバウンド(訪日外国人観光客)の誘致を目的とした愛称変更ですが、「なぜ富山の空港に岐阜県・高山の名前が入るのか」「県民の意見を無視している」といった批判が相次ぎ、ネット上では賛否が分かれています。
一方で、地方空港が愛称を活用して観光振興を図る事例は全国各地で見られ、決して珍しい取り組みではありません。
当記事では、「富山高山すし空港」が炎上した理由や愛称変更の背景、他県の事例との比較、今後の課題などについて深掘りします。
富山高山すし空港とは?
2026年7月8日、富山県は富山空港の新たな愛称を「富山高山すし空港」と発表しました。
これまで約14年間親しまれてきた「富山きときと空港」は、富山弁で「新鮮」を意味する「きときと」を使用した愛称でした。
しかし、県外や海外では意味が伝わりにくいことから、民営化を機にインバウンド向けの分かりやすい名称への変更が検討されました。
新しい愛称には、
・富山の名物である「すし」
・海外でも知名度が高い観光地「高山」
という2つの要素が盛り込まれています。
海外旅行客にとって「富山」より「高山(Takayama)」のほうが認知度が高いことから、外国人旅行者への訴求力を高める狙いがあると考えられます。

なぜ「富山高山すし空港」は批判されているのか
愛称変更がここまで大きな批判を集めた最大の理由は、「隣県の地名を空港名に入れたこと」です。
岐阜県高山市は人気観光地ですが、行政区域は富山県ではありません。
そのため、
・「なぜ富山の空港なのに高山なのか」
・「富山らしさが薄れる」
・「県民を軽視している」
という声が多く見られました。
また、愛称決定までの過程で県民への十分な説明や合意形成が行われなかったとの指摘もあります。
過去の「きときと空港」も当初は賛否がありましたが、長年使われる中で県民に浸透してきました。
それだけに、愛着のある名称を変更したことへの戸惑いも批判の一因となっています。

高山を愛称に入れた理由とは
では、なぜ富山県は高山という地名を採用したのでしょうか。
最大の理由は、海外での知名度です。
岐阜県高山市は古い町並みや伝統文化が評価され、欧米やアジアの旅行客から人気を集める観光地として知られています。
富山空港は、高山方面への玄関口として利用されるケースも少なくありません。
ただし、現状では交通アクセスに課題があります。
富山空港から高山市までは約60kmあり、自動車では約2時間、鉄道では3時間以上掛かります。
さらに、新型コロナ禍以前には運行していた直行バスも現在は運休中です。
愛称だけを変更しても交通インフラが整備されなければ、旅行者にとって利便性が向上したとは言い難く、「名前だけ先行している」と受け止められる可能性があります。
他県の空港愛称と比較
地方空港では、観光振興を目的として様々な愛称が付けられています。
代表例として挙げられるのが「高知龍馬空港」です。
全国的に知名度の高い坂本龍馬の名前を採用したことで、「高知」を直感的にイメージできる成功例として知られています。
また、
・「鳥取砂丘コナン空港」
・「米子鬼太郎空港」
のように人気アニメを活用したケースでは、国内外のファンが空港自体を観光スポットとして訪れるなど、大きな集客効果を生んでいます。
一方、
・「おいしい山形空港」
・「ブーゲンビリア空港」
のように意味が伝わりにくい愛称は、当初賛否がありました。
さらに茨城空港では、海外向けに「Tokyo」を冠する案が検討されたものの、「東京と誤解される」との反対意見が多く、採用は見送られています。
今回の「富山高山すし空港」も、こうした事例と同様に「ブランド戦略」と「地域アイデンティティ」のバランスが問われるケースと言えるでしょう。
富山空港が愛称変更を急いだ本当の理由
今回の名称変更の背景には、富山空港の利用者減少という深刻な課題があります。
富山県の資料によると、2025年度の利用者数は約38万人となり、2012年度の約95万人から6割減と大幅に減少しました。
この背景には、
・北陸新幹線の開業
・国内線の減便
・国際線の運休
などが挙げられます。
現在の国内線は羽田便と新千歳便のみとなっており、地方空港として厳しい状況が続いています。
そのため、海外旅行客への認知度向上を目指し、より分かりやすい愛称へ変更することで利用者増加を狙ったものと考えられます。

「富山高山すし空港」で観光客は増えるのか
名称変更だけで観光客が大幅に増えるとは考えにくいでしょう。
もちろん、「Takayama」や「Sushi」は外国人にとって分かりやすいキーワードです。
しかし、
・高山へのアクセス改善
・空港から観光地への交通整備
・富山ならではの観光資源のPR
・国際線の充実
などが伴わなければ、愛称変更だけで大きな効果を生むことは難しいと考えられます。
今後は、愛称を観光ブランド戦略の一部として活用し、地域全体の魅力発信につなげられるかが成功の鍵となるでしょう。

ネット上での反応と声
ネット上ではでは、様々な意見が投稿されています。
否定的な意見では、
・「なぜ隣県の名前を使うのか理解できない」
・「富山の魅力をもっと前面に出すべき」
・「県民への説明不足ではないか」
といった声が目立ちました。
一方で、
・「海外向けなら高山の知名度を活用するのは理解できる」
・「インバウンド戦略としては合理的」
・「名前だけで判断するのは早い」
といった肯定的な意見もあり、評価は大きく分かれています。
このことからも、「地域ブランド」と「観光戦略」の両立がいかに難しいテーマであるかがうかがえます。

まとめ
「富山高山すし空港」への愛称変更は、インバウンド需要の取り込みと利用者増加を目指した施策として実施されました。
しかし、隣県・高山の地名を採用したことや、県民への十分な説明がなかったと受け止められたことから、大きな議論を呼ぶ結果となっています。
一方で、地方空港では愛称を活用したブランド戦略が各地で進められており、その成否は名称そのものではなく、交通アクセスや観光施策、地域との連携によって左右されます。
「富山高山すし空港」が今後、単なる話題性で終わるのか、それとも富山県全体の観光振興につながるブランドとして定着するのか。
その答えは、愛称変更後の取り組み次第なのではないでしょうか。
※記事内の画像にはイメージが含まれています。

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